ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「え?」
思い至ったかのように声を出したのは玲様で。
そして玲様は、ぐったりしている遠坂由香を抱き起こした。
薄く、彼女は目を開けた。
「あれえ? シショ~?」
玲様の"回復"で、何とか見れる顔にはなった遠坂由香。
「由香ちゃん、君は…
呪詛対象を誰に変更したの?」
すると遠坂由香はひきつって笑った。
笑うと顔が痛いらしい。
「勿論、そこにいる座敷童様だよ。
ボクが、師匠を裏切るわけないだろ?」
「は!?」
素っ頓狂な声を出したのは藤姫で。
「玲、お前、何で最初からこの女に指定しなかったんだよ!!」
煌が怒ったように玲様に言った。
「え、い、いや。僕が全てを背負う気でいたから、そこまで気が回らなくて……」
珍しい。
玲様が自分の失策に狼狽えている。
「効果が出る時間は最短で30分後だよ、師匠……」
遠坂由香の無情な声。
「ぎゃははははは。いっそ此処で俺達に殺られるか。それとも呪詛で殺られるか、選ばせてやるよ」
陽斗が、鉤爪を撫でながら言った。
「だが1つだけ言うとな…
全員が怒りで煮えたぎってる。
その攻めは――
簡単には逝かせないぞ?」
「い、いや……」
藤姫はがたがた震えだした。
そこにはもう――
威厳も何もない…
ただの小娘の姿しかなく。