ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「――櫂、大丈夫か?」
玲様が問いかけると、櫂様は静かに微笑んだ。
落ち着いた笑みで。
「ひとまず、地上の闇は落ち着いた。
今、芹霞に紅皇と氷皇が力を注いでいる」
「氷皇もか!?」
玲様の声に櫂様は頷いた。
そして藤姫に向き直り――
「チェックメイトだ、藤姫。
お前は多くの人間を殺しすぎた。
そのツケを払えよ?」
悠然と、不敵に言ったんだ。
「芹霞を闇に追い詰めたその責任、とって貰うぞ?」
「な、なななな。
元老院である私に……」
「あの氷皇でさえこちら側に寝返っている。大体、今回のツケを取れるだけの根性ある元老院がいるか?
全てお前のせいにして、お前は闇に葬られるさ。
これだけ東京の被害を出したんだ、紫堂は――俺は、思い通りには動かん。
もう我慢の限界だ。仮に紫堂に圧力かけてこようと、俺が抑えてやる。それくらいの準備は、今までに色々としてきたつもりだ」
藤姫が後退る。
「じ、呪詛を何とかしない限りは……」
「藤姫。その呪詛の中、更に紅皇と氷皇の庇護もないのに、どうして俺も玲も無事でいられると思っている?
お前が遠坂に脅して操作させた呪詛の対象は、本当に俺だったとでも?」
くつくつ、櫂様が笑う。