ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



全ては――

虚無へと還る為の計画だった。


少なくとも俺にとっては、この渦巻く憎悪が昇華出来たら、俺と同様、利用されている仲間と共に、滅びようと決めていた。


滅び行くことこそが、

此の世に生まれた意味だと。


その為に俺は――


自分という矜持を犠牲にしても、

屈辱的な扱いを甘んじた。


復讐が達成した後の…

滅びを夢見て。



氷皇から貰ったあの特殊な鉤爪があれば、俺の身体でも滅びがくる。


永い――

永すぎた苦痛は、真実終焉を迎える。



俺はもう…疲れ果てていた。


俺達は、存在すべき人間ではなかった。


生きている限り、きっと誰かが私欲の為にまた利用する。


それは螺旋に続く無限回廊の苦しみ。



気が遠くなるような現実に…

流す涙も枯れ果てていた。



絶望――

それすら感じなくなった俺を、


滅びる刻ばかりを心待ちにしていた俺を、


現世に留まらせたのは…

氷皇が煽り立てた"憎悪"。


それだけが俺と現世をつなぐ"未練"という名の枷だった。



――芹霞。


出会った瞬間。


惹かれたのは…吸い込まれるような黒い瞳。


どこまでも俺と同じ闇の色をしているのに、どこまでも闇を拒むような、そんな強い"生きた"光に――俺は心を奪われた。


この女は憎悪の対象である紫堂櫂の愛する女だと、だから利用するのだと、はっきり心に決めていたにも関わらず、俺は不覚にも芹霞の瞳に囚われてしまった。


忘れたいのに忘れられない。


迷いが出た。


そして――。


焦りが出た。


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