ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


失くしたはずの"男"が顔を覗かせる。


滅び行く者には子孫は必要ないと、だから強がって諦観していた俺の秘めた劣情が、この上なく刺激される。


なぜ俺は――

ただの男として芹霞と出会えなかったのか。


何の力もなくてもいい。


せめて芹霞と…繋がることが出来る、普通の男であれば。


それは紫堂櫂に対する、焦り。


もう、俺から奪われたくない。



例え芹霞が――

あいつを深く愛していたとしても。



――芹霞ちゃんよー。



呼び捨てに出来ない俺。


多分、如月煌のへたれぶりは、

確実に俺の遺伝子細胞を継いでいる。


俺は…変わってしまった。


芹霞によって変わってしまった。


今ならよく判る。



『憎しみからは何も生まれぬ』



そう、虚無であった俺の中に生まれた"心"は、芹霞への愛情故だからだ。


普通の身体を持たない俺を、

蔑まれて生きてた俺を、

芹霞は見捨てることなく、普通に接した。


"男"の欠陥品である俺に、

"男"について真剣に相談すらしてきた。


それ、どんなに救われていたか、判っているだろうか。


お前、俺を他の奴と同じ"男"だと、認めてくれてたんだろ?



生きている、死んでいる。


そんなこと、どうでもいい。


芹霞が紫堂櫂の力で生き長らえている…判った時に思ったのは、紫堂櫂への嫉妬。


至って男臭い感情のみだ。



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