青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 昼食を終えた三人はすぐに図書室へと赴いた。

 壁の穴は木の板で一時的に塞がれている状態だ。業者が修理をするまで教師達が行った応急措置だ。

 風が通らない程度、人が落ちない程度の荒い作りで、お世辞にも良い出来とはいえないが、当面の措置としては充分といえよう。

 三人はそんな木の壁を一瞥すると、空兎の案内で、“本”があった場所へと行く。

「ほらね、ないでしょ?」

 空兎が指し示す箇所、一番奥の本棚の一番下の段の左端の位置には確かに一冊分の空きがあり、隣の本が傾いていた。

 図書室の多くの本が並ぶ中で、方向音痴の空兎が迷わず案内できたのは“本”自体が元々わかりやすい場所に置いてあったからである。

 クヲンが真ん前にしゃがんで、その場所をよく観察する。

「ん〜、特に変わったもんはないけどな〜」

「ないよね〜」

 横から空兎が、クヲンの顔を押しやって、自分の顔をグイッと持っていく。

 それから二人は「ん〜」と唸って、数秒──

「どう思うかね? ワトソンくん」

 二人は、異口同音に仙太へと振り返った。

 二人の名探偵モドキの視線を受けて、仙太は軽く目眩を覚えた。それでも、しばらく黙考して現場をよく見てみる。

 陽の光が届かない薄暗い端の場所。あの訳のわからない本があって、空兎がそれを見つけたために、仙太は今、訳のわからない現状に巻き込まれている。


 非日常な出来事の全ての始まりとなった場所……


 クヲンの言葉を借りるならば、“ハレの日”の原点。

(こんなのがなかったら……)

 不意にそんな考えが仙太の脳裏に過る。

 “奇跡の起こし方”の本。

 空兎にとっては、楽しみが詰まった宝の地図かも知れないが、仙太にとっては災厄が詰まった箱といったところだ。


 そんな、“本”の行方とは関係ないことを考えていると、そのことに勘づいたかのように空兎が鼻先五センチの距離で睨みを利かしていた。

「真面目に考えてんの? ワトソンくん!」

「………ごめん、ワトソンの目から見ても手掛かりになりそうなものは何も見つからないよ」

 当然だが、「本当は別のことを考えていた」なんてことを仙太は言えなかった。

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