青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 だが、仙太はそのことを言っているのではなかった。

「違ぁぁぁぁう! とにかくここから離れよう!」

 語尾と同時に仙太は、その場から逃げるように走った。いや、実際、その場から一秒でも早く、自分達に突き刺さる人目から逃げたかったのだ。

「お、おふ!(お、おう!)」

「まっへぇ!(待って!)」

 仙太の勢いに引っ張られ、クヲンと空兎も走り出した。ギャラリーの視線は、三人が見えなくなるまで追い続けられていた。




 やっと人目が届かない場所まで走った三人。公園の蛇口で、クヲンがトンガリハットを洗ってみるが、汚れや臭いは焼け石に水だった。

「ぐはっ、落ちねぇ、臭いもヤバいまんまだぜ」

 至近距離で試しに匂いを嗅いだクヲンが、その悪臭に悶絶する。

「ん〜〜〜、その臭いさえなきゃセレビアさんのかどうかわかるんだけどな〜〜……匂いで」

「犬か」

 空兎の発言に、間髪入れずに、仙太が突っ込みを入れる。しかし、空兎は自信ありそうな顔をしている。
「ま、こんな珍しいもん、被ってる人っていったら、コスプレマニアか、魔法使いくらいだろうな……」

 漂う悪臭を堪えながら、クヲンが縁の両端を持って広げて見せる。見覚えがあるものではあるが、これがセレビアのものであるとは限らない。


 けど───


 空兎は、鼻が曲がりそうな悪臭に耐えながらクヲンが掲げるトンガリハットを凝視する。そして、クヲンからハットをぶん取ると、鼻を摘まむことさえ忘れ、まじまじとそれを見つめた。

 それから、何を思ったか、臭いとわかっているはずなのに空兎は鼻をひくつかせた。

 案の定、一気に鼻腔へと流れ込んだ悪臭は吐き気さえもよおし、空兎は必死にそれを抑え込んだ。

「何やってんのさ?」

 今の彼女の行動を、呆れる以外のリアクションの取り方を仙太は知らない。

「いや、チャレンジしてみようかなって……やっぱ、ダメだった〜〜」

 涙で瞳を潤ませて、鼻と口を手で覆っている空兎。仙太の目が呆れを通り越して、哀れみに変わろうとしていた。
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