青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 ひとまず、悪臭が漂うハットをいつまでも持ち歩くわけにもいかず、三人は適当なコインランドリーを見つけると、そこで休憩を兼ねてハットを洗濯した。

 室内のベンチに三人揃って腰を掛ける。空兎は何が面白いのか、洗濯機内でぐるぐる回るハットをジッと見つめていた。斜め式なのでベンチに座った状態からでも中の様子がよく見えるのだ。

「ふぃ〜さっすがに疲れたな〜」

 全身の力が抜けたようにクヲンが寝転がる。他に利用者がいないせいか、無遠慮だ。

「あー……なんか、ジュースでも買ってこようか?」

 なんとなく落ち着かない仙太が切り出すと、クヲンが上半身を起こして、指を鳴らした。

「いいねぇ! あ、どうせならジューじゃんしようぜ!」

 ジャンケンで負けた人がジュースを買いに行くというゲームをクヲンは提案してきたが、仙太は乗り気ではなかった。

「いや、僕が買いに行くよ……何がいいかな?」

「んだよ、まぁ、いっか……んじゃ、俺、グレープジュースで!」

「わかった。空兎、君は………」

 そう、仙太が空兎の方へ振り返った瞬間、空兎の頭が、仙太の膝の上に落ちた。

「え? 空兎?」

 一瞬、何事かと思い、慌てた仙太だが、すぐに気付いた。

 一定のリズムで胸が上下している。ぐるんと仰向けの位置に顔を向けた空兎は、なんとも安らかな寝顔をしていた。

「あ………」

 思わず仙太は固まってしまった。その後ろからクヲンが顔を覗かす。そして、小声で、仙太の耳元で囁く。

「ジュースは俺が買ってくるぜ。せっち、何がいい?」

「あ〜、僕はお茶で……空兎は多分、レモンジュースだったら間違いないと思うよ」

 その言葉にクヲンはOKサインを作って応えると、なるべく足音をたてずにジュースを買いに出ていった。

 コインランドリーの室内に、妙な静けさが訪れる。

 仙太は、洗濯機の音ではなく、自分の心臓の音と空兎の寝息だけが聴こえていた。

 手には汗が滲み、喉が一気に渇いた。クヲンが帰ってくるのが待ち遠しく感じる。

 何気なく空兎の無防備な表情に視線を落とすと、心臓の鼓動は激しさを増していく。

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