青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「せっちん!」

 不意討ちのように、無邪気な顔を至近距離にまで近づけてきた空兎に、仙太は心臓が止まりそうになった。驚きの声すらも出ない。

「な、なに?」

「鍵!プリーズ!」

 ジョーの部屋の鍵は仙太が持ちっぱなしだった。そのことを思い出した仙太が、鞄から鍵を取り出して、空兎に手渡そうとしたが、そこで手を止める。

「待ちなよ、まずインターホンでいるかどうかを……」

「は? んなもん、とっくにやったわよ!」

(いつの間に……)

 どうやら仙太自身が思っている以上に、ボンヤリしていたらしい。いや、自分の世界に入り込んでいたと言うべきか……

 軽くショックを受けながら、鍵を空兎に渡す。

「サンキュ!」

 手が一瞬、触れ合い、思わず仙太はドキッと胸が高鳴る。

(………重症だな、僕)

 それでも、なんとか気を取り直して二人に続いて、部屋に入る。今朝出た時と何ら変わらぬ空間がそこにあった。

「なんか変わったことあるか?」

 初めて部屋を見るクヲンが尋ねるが、空兎が首を振って否定する。仙太の目から見ても、ジョーが部屋に帰ってきた気配はない。

「パッと見だけじゃわかんないよ!」

 空兎が乱雑に靴を脱ぎ捨て、部屋に入る。真っ先に向かったのは冷蔵庫の前だ。

 だが、戸に手を掛けたところで止まってしまう。すぐには開けない。

 クヲン、そして仙太もその様子を、玄関から固唾を飲んで見守っていた。

 意を決して、空兎が冷蔵庫の戸を開ける。


 その瞬間───


 空兎は、その場に崩れ落ちた。

 その光景を見た仙太が真っ先に駆けつける。先程までの一方的な気まずい気持ちは、空兎の姿を見たら自分でも驚くくらいなんともなくなっていた。

「大丈夫? 空兎!」

「よかった……」

 すぐさま返ってきたその言葉に、仙太は意表を突かれた。てっきり、まだ冷蔵庫の中にピザが残っているから、空兎がショックを受けたものだと思ったのだが……

 ゆっくりと、仙太は視線を冷蔵庫の中へ移していく。

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