青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
(うっ、外国の人だ……話しかけられたらどうしよ……英語、話せないし……)

 なるべく目を合わせないようにするが、彼のやっていることがどうしても気になってしまう。

 なにやら湖の水を小瓶に汲んでいるようなのだ。

(…………喉でも渇いたのかな?)

 そんなことを考えながら思わず見入っていると、視線に感づいたのだろう。男が空兎に話しかけてきた。

「気になるかね?」

「え? わ? うぇ?」

 いきなり話しかけられ、分かりやすく慌てふためく空兎。

しかも相手が外国人だという先入観からか、日本語で話しかけられたにも関わらず「アイアイムア、スカイラビッツ!」などと訳のわからない英語を乱発して勝手に混乱している。

「………日本語で大丈夫だ」

「え? あ、あははははは………」

 呆れたように返す男に、空兎はとりあえず照れ笑いで誤魔化しておいた。

「っで、何やってんの? おじさん」

「この湖の水質が木になってな。採取していた」

「ん? この湖?」

 言われて空兎は改めて湖を眺める。綺麗な湖だが、特に変わったものはないように空兎は思える。

「ねぇ? なんか変なの?」

「そういうわけではない。ほとんど知られていない辺境の湖。意外とこういう場所に誰もが求める宝は眠っているものなのだよ。職業柄の癖でね。つい、こういう場所を見てしまうとこうしてサンプルが欲しくなる」

 男が湖の水が入った小瓶を眺めながら言った。

「誰もが求める宝?」

 男の言っていることがよく分からないといった様子の空兎は首を傾げる。「それって何?」と訊こうとする前に男が言葉を続けた。

「だが、私が求める宝はここにはない」


 そう断言した男の目は、寂しそうだった。

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