くるきら万華鏡
 引き出しが音を立てて閉まるとすぐ、有坂くんは出口へ向かって歩き出し、


「良かったぁ、あいつらに多恵ちゃんやられなくて。」


 わざとらしく大きな声で、聞こえよがしに独り言。


「どういう意味?」


 小走りで追いかけながら、叫ぶように聞くと、


 一瞬だけ私をチラリと振り返り、


「平澤多恵の処女、無事保護致しましたぁ!」


 有坂くんは、意地悪く微笑んで、まるで軍人かなにかのような口調でおどけて言い、逃げるように走り出した。


「誰が! 誰が処女よー!」


 思わず大声で叫んで、私も走り出す。


 当たってるけど… でもそんな情報、有坂くんが入手できるはずない。


 確実に有坂くんは、想像でものを言っている!


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