舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜
「ありがとう、部屋、ここだから」


「そっか。じゃあ、これ」


差し出されたバラの花束を受け取り、何か言葉を続けようとするけれど何も出てこない。


思わず怜音の顔を見ると、怜音も何か言いたげな表情をしていた。


「…上がっていく?とか、言うなよ?」


「…言わないよ」


「そ…ざーんねん。じゃあ、な」


「うん」


私がそう言って片手で手を振ろうとすると、怜音は一歩近づいてきてグイッと私を引き寄せた。


「な、なに…?」


「ん…なんにも。おやすみ」


そう言って怜音は体を離すと、私の顔を見ずに背を向けた。


カツカツと怜音の履く靴の音が妙に響いていた。


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