舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜
この時間のお店はスタッフしかいないから、表のドアから入った。


怜音が店に入ると前と同じようにみんなが頭を下げた。


私も皆さんに挨拶しながら怜音の行く方へ足を進めていると、怜音が立ち止まったので私も立ち止まった。



「ここ、お前のロッカーね。ここに入れとくから、帰り忘れんなよ」


「あ、ありがとうございます」


長細いグレーのロッカーのネームプレートに『奈々』というシールが貼られていた。


自分がスタッフとして認められたようで、少し嬉しかった。


「コーヒーでも飲みに行く?」


「え…ううん。だって、仕事中じゃ…」


「真面目だねぇ、奈々は。葵ちゃん、俺出かけてもいい?」


「いいっすよー。今暇だしー」


怜音が声をかけたのは黒髪に青い瞳の男。


葵っていうんだ。


掃除をしながらそういう葵、そして他のスタッフたちも「どうぞ!」なんて笑って言っている。


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