舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜
「だってさ?コーヒー飲んだら戻るから、それまで頼むよー」


「はーい。いってらっしゃい」


元気な葵の返事を聞いて、怜音は私に微笑んでからまた先を歩きだした。



社長さんだから、別にいいのかな?


適当なカフェに入って、怜音はコーヒーを、私はグレープフルーツジュースを頼んだ。



「タバコ、いい?」


「あ、どうぞ」


私がそう言うとサングラスを外した怜音はポケットから煙草を取り出して、慣れた手つきでタバコに火をつけた。


「あのさ、ちょっと思ってたんだけど」


「何ですか?」


「敬語、やめない?」


「え?どうしてですか?」


「何か、女の子に敬語使われるの、慣れてないから」


「ああ…職業柄、そうなんですかね」


「うん。だから、やめて。俺、気にしないから」


「でも、涼介さんも保っちゃんもみんな敬語ですよね?私も一応スタッフだし、その辺はきっちりした方がいいと思うんですけど」


私がそう言うと、怜音は煙を上に向かって吐いて、ため息をついた。

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