レクイエム<鎮魂歌>
兄さんを助けに……。

多分きっと、兄さんはあのまま残ったのだろう。

私だけ逃がして……


ベッドを降りようと体を動かし、床に足をつけて体重を かけるとよろめき、倒れそうになった。

が、青年が支えてくれたので倒れることはなかった。

「―――なにしてるの!は4日間も寝込んでいたのに、こんな急に体を動かしたらダメじゃないか!?」

だが、他人のはずなのにかなり怒られた。

それでもモニカは退くわけにはいかなかった。大切な大切な家族のことだから。

「―――行かなきゃいけないの。兄さんを助けに!!」

涙目になりながらも必死に彼の腕から逃れようともがくが、彼は一向に放してはくれない。

「………行くって、場所が分かってるの!?ましてや、今自分がいる所も把握してないだろう。」

そう言われればモニカもハッとする。

「まずは事情を話してくれない?出来るかぎりは俺等も協力するから。」

「……俺等?」

今、この部屋には自分と目の前に居る青年しかいないはずだ。

「ああ、それは―――」

―――バン

突然、部屋の扉が開いた。
それも乱暴に。

「お兄様、抜け駆けなんてズルイですわよ。」

そして、そこからずかずかと入って来た少女はそう言ったのだ。



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