=寝ても覚めても=【完】
薬を飲み忘れないかどうかだけ、間違いなくみていたらよいからとは言われている。
どうやら大病は治りかけに見えるが、それならなおさら「お客様」の主にそんなことをされては不味い。
『いや、気にしないで。お世話になるのはこちらですから。君は座っていて?』
聞いていたような変わった人物には見えない。
言われた通りに豪華な応接室を思わせる椅子に腰掛けてみたが、何だか落ち着かなかった。
読みかけに伏せてあるのは経済書物。
まだ儲けようと言うのか、この男。
『お待たせしました。本当は乾杯がしたいけれど、紅茶です。出来合わせで申し訳ない』