神隠し
不機嫌だった男の子の声も、真剣味を帯びる。

「あっ、じゃあ誰もいないはずの屋敷から、灯りや声がするって言うのは…」

―あながち、ただの噂じゃなかったってこと。だから近付かない方が良かった。迂闊に近付けば、彼等に引きずり込まれてしまうから…。

そう言った少年の足がゆっくりになり、ふと横を見た。

だからアタシも思わずそっちを見た。

5センチほど空いた襖の隙間から見えたのは…地獄、だった。

着物を着た男女が部屋いっぱいにいた。

そしてその誰もが、笑っていた。おかしそうに。

…その体を自身の血で濡らしながら。

血は切られた肌や、潰れた体の至る部分から絶えず流れ出ている。

中には臓器や目玉を垂れ下げながら、笑い、踊り狂う屍もいた。

あまりに異様な光景に、気が遠のきそうになる。

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