忘却の勇者

アモスは怪訝な顔つきをしているレインを視界の隅に入れると、小さく噴出し「詳しいことは何れ話す」とお茶を濁した。


まだ納得していないレインだが、そう言われてしまってはこれ以上の追求できない。


老人の考えは全くもって理解不能だと、自己完結するため勝手に結論付けたが、もう一つだけ浮かんだ疑問をぶつけた。


「最後に一つだけ、なぜアモール帝国に行かせたのですか?」


この質問にはアモスは饒舌に答えた。


「一つはお前も知っての通り、少しでもこの国から離れさせたかったから。もう一つは、最悪の状況が起こった時のための保険じゃ」


「保険?」


「彼が二カ国の橋渡しになるという保険じゃよ」


「……アモス様の言い回しは凄く分かりづら」


言葉を打ち切り背後を振り向く。


悪意に満ちた邪悪な魔力。
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