忘却の勇者

しかもこの後危険な洞窟に足を踏み入れるのだから、尚更嫌になってくる。


これなら人質として帝都に残ったマリの方が百倍マシだと、魔術の心がない自分自身を二人は呪った。


今回の作戦に用意された人員はたったの四人。


オレオとコーズに十三騎士のエクター、そして現在車を運転している兵士のみ。


少数精鋭とは聞いていたが、ここまで人員が少ないのは予想外であった。


けれどこれにはれっきとした理由がある。


「洞窟内は補強工事が行われてないから、銃火器の類はなかなか使えないんだって。だからオレみたいに個人戦闘の得意な奴らを向かわせたってわけさ」


ケイから受け取ったのであろう書類を眺めながら、エクターが説明してくれた。


アモール帝国の兵士は、近代兵器を駆使した集団戦闘を得意としている。


反面、一対一での個人戦闘は弱い。


さらに岩盤が弱い洞窟内で火器を使うと、最悪洞窟が崩れて生き埋めになってしまう。


火器を使わず且つ魔物との個人戦闘に強い者は、この国では鉄血の十三騎士のみ。
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