忘却の勇者

とはいえ現在動ける騎士は数少なく、困っていた所をたまたまオレオ達が不法入国してきたというわけだ。


もしかしたらケイは、最初からこれを狙ってオレオ達を連行してきたのかもしれない。


無論それは憶測にすぎないので、真実が解き明かされることはないのだけど。


「ふーん。けど個人戦闘の得意な兵士も何人かはいるだろ? わざわざ責任者のお前が出向く必要はないんじゃないか?」


勇者とその仲間。魔物との戦闘経験が豊富だと踏んで(実の所あまりないのだけど)ケイが自分達を選んだのはよくわかったが、帝都防衛の最高責任者であるエクターを同行させた理由が見当たらない。


帝都にいる十三騎士は現在三人。


司令官のケイは別にしても、もう一人の騎士を同行させる手もあったはずだ。


「あー……本当は言っちゃ駄目だけど、洞窟に向かった小隊というのは嘘で、実際洞窟に向かったのは十三騎士のメンバーなんだ」


「十三騎士が?」


「そっ。最高戦力の一人が行方不明だなんてバレたら、色々と上がうるさいんだよねぇ。ロクな仕事もしないであれやこれやとトンチンカンな指示を出してさ、マジでやんなっちゃうよ」
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