忘却の勇者

十二年前は一面真っ白な美しい砂浜であったが、ケイが倒した魔物の残骸によって黒い大地へと変わっている。


荒く堅い粒子の砂は、とても砂浜とは呼べる代物ではない。


長い月日がたった今も、この黒い大地は健在している。


それほど魔物との死闘が激しかったということだ。


ジャリジャリと足音は立てる人物は、海岸の中ほどまで歩くと足を止めた。


黒いローブを纏った人物はフードを眼深く被っているが、彼は水平線の彼方をしっかりと見つめている。


いよいよ来るか。


ケイは視線を上に上げる。


右手を頭上にかかげると、手のひらから一本の光の柱が突き出し空に伸びる。


ぐんぐん伸びて行く光は、ある一定の距離まで進むとピタリと止まった。


刹那、頭上からガラスのような破片が降り注ぐ。


晴天の空から突如現れたのは、空に浮かぶ鉄の塊。
< 383 / 581 >

この作品をシェア

pagetop