忘却の勇者

これ以上無意味なお喋りを繰り返す暇があるのなら、下で戦っているマリ達を助けに行った方が有効的だ。


「互いの利害が一致した。とでも言いたいのか」


「信じられないか?」


「嗚呼。もしお前が死にたがっているのなら、自ら自決する手立てもあったはずだ。
もし四聖官に『自決することは許さない』という命令をされていたら、僕に殺すよう頼んだりはしないはず」


「察しが良いな。君の言う通り、童は四聖官に『自決するな』という命を受けていない。いや、そのような命をする必要がなかったというのが正しいか」


「どういうことだ」


「試しにその刀を振り下ろすがいい」


話の趣旨が見えてこない。


だがこのまま考えた所で、魔王の思惑などわかるわけもなく、オレオは半信半疑な疑いの眼を向けたまま、手にしている黒刀を振り落とした。


脳天に下ろされた漆黒の刃。


勇者の愛刀は魔王の血をすすることはなく、強力な壁によってその刀身を弾かれた。
< 530 / 581 >

この作品をシェア

pagetop