忘却の勇者

オレオは力任せに黒刀をそのまま振り上げると、ブチブチと筋肉が千切れていく音が両者の耳に届いた。


みねうちだというのに断たれた腕は、残りの肉と皮膚によって辛うじて繋がっている状態で、もう動かすことは叶わない。


残念だったね。


オレオは最後に別れの言葉を添え、黒刀を横凪で払った。


生首が出来上がると、夢魔の身体は徐々に透明度を増していき、最終的に身体も地面にぶちまかれた血液も跡形もなく消えていく。


あっけない最後。魔法が使えなければ敵じゃない。


これで夢魔の魔法も解けるはずだ。


……それにしても、夢魔が現れるなんて信じられない。


黒刀を戻しながら、オレオは夢魔のことを考えた。


夢魔の存在と能力を知っていたのは、昔自宅にあった魔物図鑑を見たからだ。


図鑑によれば、夢魔は百年ほど前に当時の勇者によってほぼ殲滅されたと記されていたのだが……。

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