忘却の勇者

覚めない悪夢に襲われ続け、見たこともない化け物が魂を貪る。


自分が魔法にかかり、長い眠りについていたことを、彼女はなんとなくだが夢の中で感じ取っていた。


ミウの表情が優れないことを読み取ると、オレオは用意していたオレンジジュースをコップに注いで手渡した。


冷蔵庫の中にあった物を勝手に物色してきた物。ミウは素直に受け取り口にした。


甘酸っぱいオレンジの味が、口の中に広がる。


糖分は頭の疲れを癒してくれる。


頭も動き始め、自分が置かれていた状況を冷静に分析できるようになってきた。


そして気づく。兄は大丈夫なのかと。


「あの、お兄ちゃんは大丈夫なんですか?」


「うん。今は眠ってるけど身体に問題はないよ」


ミウを安心したように笑みをこぼした。


それから二人は、コーズが目を覚ますまでの間話を交わしていた。
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