かさの向こうに縁あり
「『これやこの』……か。この部屋みたいだね……」



悲しそうな表情で、札を見つめながら平助はそう呟いた。


私は彼が言った意味が全く分からなかった。


少しだけ首を傾げていると、彼はそんな私に気づいた。



「あ、気にしないでね。……それよりさ」



微笑んで言われると、ただ頷くしかなかった。


でもすぐに、彼は何だか切ない表情になった。

そしてさらに続けようとする。


何を言われるのか、私は内心でドキドキしていた。



「君の――」



その瞬間、平助は驚いたような顔をして素早く口を押さえた。

私は息を止める。


“君の”――?


何を言おうとしたのかはさっぱり分からない。


けれどその言葉は、胸に太鼓の大きな音のようにドンと響いた。



「……あっ、ちょっとこれ返してくるね」



慌てて私にそう言うと、平助は急いで踵を返し、さっさと部屋を出ていってしまった。

「どうしたんだろう」と考える暇もなく。


そしてさらに気になった。



障子を閉めた彼の頬が、うっすらと赤く見えたことが――



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