君はガラスの靴を置いていく



結局明日香のせいで授業に間に合わずこのままサボる事になってしまった。


文化祭………か。この前、夏休みが終わったばかりなのに時間の進みが早い。青々としていた木々はいつの間にか赤く色付いて、ふわっと通りすぎる風からは秋の匂いがした。


『みやって、最近上の空だよね』

明日香は自販機で買った紅茶を飲みながら『ふぅー』と息をはいた。


『は、どこが?』

別にいつも通りだし、ぼーっとしてるのは今にはじまった事じゃない。だけど隠してるはずの部分を指摘された気がして少し強めに反応してしまった。



『みやは嘘つきだよね、色々と』

『………』


『1回付き合った相手には恋愛感情は湧かないって言ってたのに』


自分でもうやむやにしていた答え。

そうはっきりと言われると否定したくなるけど。


『私はみやの事いつも見てるから分かるよ』


嘘つきはどっちだよ。

俺への気持ちは断ち切ると約束したのに全然だし、

友達だもんね!と無駄に強調してるくせに、いつも明日香からの視線は感じていた。


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