君はガラスの靴を置いていく
『人知れず内緒で付き合う事もできた。その方が千花ちゃんもゆっくり考えられるって分かってた』
『……』
『でもそうしなかったのは宮澤君、
君に後悔して欲しかったから』
先輩と目が合ってドキッとした。
『俺は宮澤君に嫉妬してたし千花ちゃんと付き合ってた夏の間どれだけ羨ましいと思ったか分からないだろう?』
片想いして片想いの辛さを知った。
あの夏に嫉妬していた先輩はまさに今の俺だ。
まるでオウム返しのように目の前で仲がいい所を見せつけられて、頭がおかしくなるほど嫉妬した。
『千花ちゃんはちゃんと俺を見てくれたよ。応えてくれたしずっと笑ってくれた』
『……』
『自信はあった。でも心の中でみんなに知らせてしまえば千花ちゃんは俺と別れられないってズルい考えもあった』
先輩は目を伏せて少し切ない顔をした。
『みんながお似合いだって言ってくれればくれるほど俺は千花ちゃんの逃げ道を塞いでたんだ。好きな人の前で余裕なんてないよ。今の君なら分かるだろ?』
分かるよ。
分からない訳がない。
いつも無気力で今さえ良ければいいって適当に過ごしてた俺が周りが見えなくなるほど夢中になった。
たかが恋愛、たかが一瞬の、
高校生活の遊びの恋愛がこんなに苦しいなんて思わなかった。