君はガラスの靴を置いていく




『きっと千花ちゃんは自分の答えを出している。だから聞いたんだよ。千花ちゃんの事本当に好きなのかって』

先輩が真剣な顔になった。


『俺は俺を選んでほしいって思ってるけど最後はちゃんと平等に選択させたいって思ってる。勿論、どっちも選ばないって事もあるかもしれないしね』

『……』


『明日で千花ちゃんとの期間付きでの付き合いを終わりにするよ。それでどうするのかは千花ちゃんが決める事だ』


千花の気持ち、千花がどうしたいのか。

長かった片想いが終わろうとしてる。


千花と先輩がどんな二人だけの時間を過ごしてきたのか俺には分からない。

きっと二人にしか分からない事、共有してきたもの、笑った時間もたくさんあると思う。

俺が千花と向き合ったのは別れた後で、その過ごした時間をはかりにかけられたら勝ち目はない。

むしろ今だって千花を怒らせたままでアピールの仕方も自分の見せ方も間違いだらけだった。


先輩と初めてちゃんと話して本音を聞いて、この人と競うなんて無理だって思ったよ。

俺なんて千花を泣かせた数の方が多いのに。


昼休みが終わるチャイムが鳴ってバタバタと中庭にいた生徒が校舎の中へと消えていく。それを横目で感じながら先輩も歩き出した。


『宮澤君、最後に教えてあげるよ』

俺の横を通りすぎて4歩目、風にのって声が届いてきた。



『千花ちゃんはね、確かに俺といた時幸せそうだったし笑ってた。でもそれだけだった。
………怒ったり泣いたりするのはきっと君の前だけだよ』



< 276 / 300 >

この作品をシェア

pagetop