君はガラスの靴を置いていく






『ここから1時間くらいかな。今日は法事で朝から行ってたの』


『ふーん、そうなんだ』



千花もやっとアイスを食べ終わり一息ついた。公園では木々が多いせいか蝉の声がうるさく響いている

そんな中、ベンチに座る俺達の影がオレンジ色に染まっていた。



『今日ね、親戚の人から可愛い浴衣貰ったの』


千花が嬉しそうに言う。


『………浴衣?』


『うん、もう誰も着ないからって。あんまり着る機会ないけど来年のお祭りとかに使えたらいいなと思って……』


もしかして祭りで俺が千花の浴衣姿を見たいって言ったから?

そうゆう小さな事を覚えてくれるのは嬉しいけど、俺の中で少しの違和感。


多分、来年の自分を想像出来ないんじゃなくて千花と居る事が想像出来ない。

だって1ヶ月しか続いた事ないのに1年後の約束なんて俺に出来る訳がないじゃん。

今までの人はそれを知ってるから遠い未来の話しはしなかった。だから違和感があったんだと思う。



『……宮澤君?』


反応がない俺に千花が呼びかける。


『あぁ、ごめんごめん。じゃ、来年の祭りでは千花の浴衣姿が見られるね』


俺は笑顔でそう言った。

多分、心の声が聞こえてたら俺って最低な奴だと思う。千花は可愛いし彼女だし、浴衣姿を見たいってのも本音。

でも来年はどうかな。そんな先の事は想像も出来ない。



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