君はガラスの靴を置いていく






小さな公園にはブランコと鉄棒と砂場しかなく、
後はベンチが2つあるだけ。

夕食時の今は子供の姿はなくて、居るのは犬の散歩をしている人ぐらいだ。


『ここ、座ろ?』


俺は木製のベンチに腰かけて千花を隣に誘った。
二人掛けのベンチだけど、千花は俺と距離を取ってちょこんと座る。


『なんで離れて座るの?』


『………えーと、なんとなく』


付き合う前より付き合った今の方が何故か恥ずかしそう。俺はニコリと笑い千花の方に近付いた。そして、



『はい、アイス』

コンビニで買った棒付きのアイスを千花に手渡した


『え、あ、有り難う』


俺が無償で何かをおごるのは彼女の特権。
まぁ、たかがアイスだけど。

千花はソーダ味のアイスをペロリと舐める。


『冷たくて美味しい』


やっとその顔は笑顔になった。

夏の暑さにアイスの溶けるスピードが追い付かない。その慌てて食べている千花が少し可愛かった


それにしても17歳の思春期の男って悲しい生き物だと思う。だって、なんでもエロい事に置き換えて考えてしまうから。

もう脳の9割はそんな事ばっかり。


俺はそんな欲求を打ち消すように自分のアイスを
一気に食べた。



『親戚の家ってここからどれぐらいなの?』


食べ終わった棒をゴミ箱へと投げるとカンッ!と
1回で入った。



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