君はガラスの靴を置いていく






『………も、もしもし?』


諦めて切ろうとした瞬間、電話の向こう側で声がした。



『あ、千花?今出掛けてたりする?』


『ううん、リビングに携帯置きっぱなしにしちゃって。どうしたの?』

って事は家に居るって事だよな。


『これから一緒に宿題やらない?
俺ん家だけど、まるも居るから』


やっぱり千花は家と言う言葉に動揺してたけど、
目的が勉強だからか来てくれる事になった。


駅まで迎えに行くって言ったけど、住所を教えてくれれば自分で来るって。多分、まるを気遣っての事だと思うけど。


俺の家は駅から近いし、複雑な道じゃないからすぐ分かると思う。



『糸井さん大丈夫かな?俺が迎えに行こうか?』


まるは俺の部屋を行ったり来たり。何故かソワソワと落ち着かない様子。



『いや、なんでお前が行くんだよ?』


『だって糸井さん初めて宮澤ん家来るんだろ?
迷ったりナンパとかされてたら可哀想じゃん』


だからなんでまるがそんなに心配するんだよ?
他の女友達なら絶対そんな事言わないのに。

やっぱり千花は女子って言うより女の子なんだよな。見た目も弱々しいし。



『駅に着いた頃、俺が歩いて迎えに行くよ。
それなら文句ないだろ?』


こうでも言わなきゃ本当にまるが行きそうだし。


まるはその後も部屋を掃除し続け、気付けばめちゃめちゃ綺麗になっていた。




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