雪月花~死生の屋敷
見られる恐怖
私はこうして雪月花に入る事にした。

未知の領域への第一歩…。

これが思うように足が進まないのだった。

色武さんとは小屋で別れてきた。私はしっかりと色武さんにお礼を言ってきた。色武さんはそんな私を笑顔で送ってくれていた。

私が居る位置は、雪月花の屋敷から少し離れた位置にある場所。雪月花の入口には先ほどまで居た霊魂の姿はない。

おそらく色武さんに貰った数珠が力を発揮して、私を人間以外の姿に変えているのだろう。もしくは、生きている身体を持っている私の気配などを感じて、入口や窓の近くに姿を現していたのかもしれない…。

推測の域は出ていないけどおそらくそんな所だと思う。

一度心の中で気合いを入れ直した私は、一歩づつ力を入れて前に進んで行った。当然そんなに距離が離れていた訳ではないので、すぐに入口にたどり着いた。

入口は少し西洋風な作りの引き戸になっている。擦りガラス越しに見える中の様子は、木造の床に色褪せた壁。例えるなら古い学校の校舎の廊下の様な内装をしている。

取っ手をつかんだ私は、ゆっくりと引き戸を引き、中に足を踏み入れた。

中は外から見た様子と同じく、老朽化してはいるがしっかりとした作りの木造屋敷だ。長く続く廊下。どこまでも続きそうなほど長い廊下が、目の前に広がっている。

ここを進むのね…この先に孝也がいる。

私はあまり足音を立てないように気をつけながら先に進みだした。屋敷の中は、灯りなどはなく真っ暗なのだが、不思議と視界は良好だった。

暗い中でも、壁の汚れや木の木目などをはっきりと目視する事が出来る。不思議で仕方無い事なのだが、その理由を知るすべなど持ち合わせていない私は、ただ前に進む事しか出来ない。

どこまでも続きそうな廊下をひたすら進む私。

1分…2分……10分。

流石に私も異変に気づく。いくらなんでも廊下が長過ぎると…。
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