雪月花~死生の屋敷
「霊魂は実態があるようでない存在です。いくら肉体にダメージを与えようとも、何の効果もございません。ですから霊魂に対抗する為には、精神にダメージを与える必要がございます」

「精神にですか?」

「はい。雪月花に居る霊魂は、大きな情念を抱いて亡くなられた方しかおりません。そして霊魂の強さとは、その切なる願いが強ければ強いほど、強大なものになります。この断の札は、霊魂の抱えている切なる願いを文章で映し出す事が出来ます。その文章を手掛かりに、霊魂の思いを弱めるのです」

「つまりは、説得するって事ですか?」

色武は微笑みを受けべながら頷く。でもそれって…。

「簡単じゃ…ないですよね?」

全ての人がまっとうな考えを持っているとは限らない。世の中には理不尽と言う言葉があるぐらいだ…話が通じない人間など腐るほど居る。

「そうですね…ですがそれが出来ないと、孝也さんに会い事など到底不可能かと思います。成海さんをこの場所に導くほどの力がある孝也さんは、間違いなくこの雪月花の中でも上位の力を持っている事が考えられます。力の強い者の周りには同じ様な強さの霊魂が集まるものです。孝也さんに会う前に、必ず成海さんの弊害になる霊魂が現れるでしょう…」

「……頑張ってみます」

人を説得なんてした事がない。交渉術の様な特殊な知識も当然ない…。

私は雪月花に入る前から、かなりの不安を覚える事になった。その後私は、色武さんに雪月花で気をつける事などを教わりました。

先ほどの話を要約すると、数珠をつける事で弱い霊魂には生きている人間だという事はバレないようです。けど強い霊魂にはその数珠もあまり効果が望めないよう…。

強い霊魂に襲われた時は、何とか逃げるか、断の札を使い相手の精神を落ち着かせる。そうすれば、いくら襲われようとも数珠が身を守ってくれるらしいです。

それと雪月花の屋敷の中は、とてつもなく広いという事。外観以上に屋敷の中はなぜか広いと色武さんは言ってました。
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