雪月花~死生の屋敷
孝也に協力してもらいながら私は竜也君に告白する準備を進める。最初は会ったら会話をする程度の仲だった私と竜也君の関係。

でも少しづつではあるけど私と竜也君は、ゆっくりと距離を詰めていった。会話の波長が合ってきたのかもしれない。そう感じていたのは私だけだったかもしれないけど、毎日が楽しく感じるほど私の心は満足していた。

後は私が竜也君に告白するタイミングを見定めるだけ。そう思っていた…。

けど私は知らなかった。竜也君を狙っていたのは私だけではなかったという事に…。

子供心に私は、竜也君と付き合って、毎日を楽しく過ごす妄想を膨らませていたの。全ては空想の産物だと知りながら、それが現実に起きる事だと確信していた。

理想は行動の先に広がる景色だと知らずに。だから私は他の女の子に遅れをとったの。

私の知らないうちに他の女の子が竜也君に告白をし…。

竜也君はそれを承諾してしまっていた。

竜也君は悪くない。告白をされてそれを受けただけだし、私の彼女な訳でもないから。

竜也君に告白した子も悪くない。その子は私の知らない子だし、私が竜也君が好きだと知らないはずだから。

誰も悪くない。しいて言えば、告白が出来なかった私の弱さが悪い。

私は告白する前に失恋した。

目の前が真っ暗になるんじゃないかと思うぐらいのショックだった。もし時間を戻せるのなら、私は彼女が告白する前に絶対に告白すると誓える。

当時の私は、それぐらい自分の心の弱さを呪った。そして私は、竜也君との距離を開ける為に…。

孝也とも会話をしなくなった。




昔の思い出ね…。

当時の私は夢見る少女だった。現実で起きた1の出来事を、妄想で10の出来事に変えて楽しんでいた。デートのプランや、ファーストキスの場所なども妄想で考えていた。

今考えると、随分と能天気な女だったと思うわ。
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