ノイズ
無我夢中で廊下を走った。


怖かった。


ただ怖くて、後ろを振り返ることなど出来なかった。


誰でもかまわない。


とにかく‘生きている’人間のいる場所までたどり着けば、きっと大丈夫。


可奈はそう自分に言い聞かせながら、必死に廊下を走り続けた。


走りながら左手に装着している腕時計を見る。


ピンク色の腕時計はそろそろホームルームが始まる時刻を指していた。


通りで生徒はおろか、教師さえ歩いていないはずだ。



こんなことなら、教室に近いトイレを使えばよかった。



背後からやってくる恐怖に加え、遅刻という現実にも立ち向かわなくはいけないのだ。


やっぱり今日は厄日に違いないと可奈は思った。


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