ノイズ
「きゃあっ!」



可奈は驚いて悲鳴をあげた。


鏡の中から抜け出した少女が、とうとう自分を捕まえに来たのだと思った。


思わずその場にしゃがみ込み、両手で顔を覆った。


「おまえ何やってんの?」



聞き覚えのある声に顔を上げると、文也が心配そうに自分を見つめている。



「文也こそ何やってんのよ」



「杉浦先生に言われておまえを探しに来たんだよ。登校したはずなのに、いつまでも教室に来ないからさ」



そう言えば、先生と廊下で話をしてからずいぶんと時間が経っている。


登校したはずの生徒が教室に来ないのだから、心配するのはクラス担任として当前のことだろう。


可奈はゆっくりと立ち上がって文也の顔を見た。

< 219 / 309 >

この作品をシェア

pagetop