ノイズ
沙織の目はどこか虚ろで足取りも覚束ないようだった。



「沙織、心配したんだよ。大丈夫?」



可奈の声が耳に届いてないのだろうか。


沙織の返事は全くない。



「あたし可奈だよ。お願いだからしっかりして!」



可奈は二度、三度と沙織の肩を譲っては、必死に声を掛け続けた。



「あ……可奈…?」



そのかいあってか、ようやく虚ろな目に光りが戻ってきた。


沙織は可奈の顔を見ると微笑んでみせたが、辺りを見回すと不安そうに言った。



「あたし……どうしてこんな所にいるんだろう?」



「沙織、もしかして何も覚えてないの?」


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