an alley cat
―季節は冬。






私は黒と白色が混じった母猫から産まれた。



産まれた場所はある家の倉庫。


けれど、産まれてから1ヶ月後、私だけがダンボールに入れて捨てられた。



それは、産まれた仔猫のうち、私だけが“黒猫”だったから。



この街の、この地域では、「黒猫は縁起が悪い」と、昔から伝えられていたそうで。



―いつの時代の話かは不明。





私は1人寂しく寒空の下、ただ丸められた新聞紙に身を寄せていた。




捨てられて1日経ち、ダンボールの中は雪で濡れ、

冷たくて、冷たくて、気付くと私はダンボールから這い出ていた。


歩く力もそんなに無いのに、私は、ただ、ただ、歩く。





どれくらい歩いたのか、大きな川にたどり着いた。

私は川の流れを横に、川沿いを歩いたいた。


足は冷たく上手く動かない。

小さな石に足を躓かせ、足を草で滑らせ、私は川へと・・・。






冬の川って、こんなに冷たいのか、私は必死に草にしがみ付いていた。



―誰か・・・助けて・・・私を、助けて!




何度鳴いても、叫んでも、喚いても、私の想いは決して人には届かない。





それどころか、私に気付く人すら・・・いない。








諦めかけた次の瞬間、目の前に大きな丸い物が転がって来た。












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