an alley cat
「おいっ、冬真!どこ飛ばしてんだ!取って来いよっ」

「悪い悪いっ!足元が狂った!」

「言い訳してんじゃねーぞぉ」

「うっせーなぁ!」



賑やかな声が聞こえる。




タッタッタと地面を蹴る足音。

だんだん私に近付いてくる。



「危ねー!川に落ちてたら終わりだな」


そう言って、1人の男の子が拾ったのは、転がってきたボール。




「冬真ーっ!あったかー?」




丘の上の広場で、その男の子の友達が叫ぶ。



「おう!今行く」


ボールを持った男の子は、ゆっくりと私の前から遠ざかろうと立ち上がる。




「ミィッ・・・・ミギャッ」



私は必死になって声を出した。



すると、男の子はこっちを振り向いて、戻ってきた。






「?」


男の子はガサガサと草を掻き分け、首を傾げる。



「ミーッ・・・ミィ・・・」




―ここだよ・・・ここにいるよ!





「ね、猫!?何でこんな所にいるんだ!?」





―やっと、気付いてくれた。






男の子は私を水から引き上げ、両手で大事そうに抱えて、友達が待っている広場へ。
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