みにくい獣の子
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くぁああ
と大きな欠伸をしながら赤い髪の青年は、目的駅で電車を降り私に手を振った。
じゃあねー
口の動きで伝わる挨拶に、笑みがこぼれた
(いってらっしゃい)
珍しく…いや初めて登校を共にした。私が、いつもより早く家を出たのだ。ちなみに昨夜私のベッドに侵入してきた変態少年は、朝起きたら何事もなかったように歯を磨いていた。
「みさきさん、俺さ、歯ぁ白くね?」
と仰い笑顔を向けるという謎なテンションを見せつけられ、彼が精神的にぐらぐらしているのかと勘ぐった私が切なくなった。
なんか昨日は変な感じしたんだけど…
思いながら、腕時計に目をやり、電車の窓の外を見た。
ギンギンギラギラ太陽はえげつない光を放っている。うざったいほどの快晴だった。
さっさと授業を終えて、友達と買い物でも行こうかなー。今夜リクが帰ってこないなら晩御飯も外食で済ませてしまおうか。
みにくい獣の子
第9話
「みさき、いいことあったでしょ」
友人から言われたヒトコトにきょとんとする。
「なにがぁ」
「彼氏くんとヨリ戻したの?」
「んなわけないじゃん」
アイスコーヒーをかき混ぜながら、ニヤニヤする友人を胡散臭げに見る。
「なんか最近毎日朝ごはん食べてるみたいだしー、最近あんまり出歩いてないみたいだしー、買い物してても時々男物見てるし、つーか買ってるし!」
どうだっと言わんばかりに友人は私のショップバックを指差した。
その中には、この前リクが欲しがっていた帽子。値下がりしてたからつい買っちゃったけど…ばれてたか
「、これは私が」
「一緒に暮らしてるんだ」
「違うよ、うん、私が」
「ね、いつから?」
私の弁明は右から左へ受け流されている。ちくしょう、強いなこいつ