みにくい獣の子
私も再度目をつぶった。目覚まし時計、そろそろ鳴るんじゃないか?もう時計を見たくなくて、何も考えずに目をつぶった
ガサガサガサ
ー…
あいつは、私の睡眠妨害を目的に作られた兵器かもしれない
今何時だろ…わ、5時?
カーテンの隙間からは薄明かりが漏れ始めていた。
ごそごそと性懲りもなく音はたち続けて、頭は順調に目覚めてきた。泣きたい。
仕方なく起き上がり、ベッドから降りた。無視できない自分は小心者だろうか
音のする方向へ向かっていく。
「おーい、狼ちゃん…」
ガタン、と一際大きな音がして、薄暗い部屋に佇むそいつが私の方向を振り向いた。
目の前にいたのは、そこにいなかったはずの
「リク…?」
人、だった。
動物が暴れていると決めつけていた私は、さすがにフリーズする。
なに、いつの間に帰ってきてたの。ていうか、狼は?
しゃがみこんで自身のカバンをごそごそする彼は上半身裸だった
「た、だいま」
「…なにしてんの?」
「なにって言うか、…その、着替え…かな」
「そうだね、とりあえず服着ようか…」
リクは急いでTシャツを引っ張り出して顔を入れた。痩せた体躯が、朝の薄暗い部屋で妙に浮き上がって見えた
「リク」
「ん?」
「合鍵、持ってたっけ?」
「……」
黙る彼を、どう受け止めるべきか迷った。彼はどうやってこの部屋に入れたのか。まるで初めからここにいたかのように。いや、そんなことあるわけないのだ、そんなこと。
話の辻褄は合うけれど、
あるわけがない。
「あのー…さあ、」
「みさきさん」
「さっきまで狼がここにいたの。知ってる?」
「……みさきさん、聞いてくれる?」
「うん、」
「その…信じなくていいから、さ」
決意を固めた目だった。しかし何かに怯えていて、悲しげでもあった。
MELT DOWN
「オレ、人間じゃないんだ」