みにくい獣の子
「ダイジョブ、すぐ落ち着く」
「ちょっと寝る?」
「…ん」
ソファの上で背もたれに深く寄りかかり、額に腕をのせて静かになる。
リクはそんな状態でもなんだか綺麗だった。
近寄りがたいというか、儚げというか。いつもツンツンしている赤い髪も心なしか大人しい
「みさきさん、膝借りるわ」
「膝っ…?」
のっそり、了解をとることなくリクの頭が私の膝に位置どってきた。
頭は重くて温かい。心地よい重量感が気持ち良い
「リク…」
安心してね。私、リクが好きだから。どんな貴方でも「知りたい」って思えるよ。
気持ちを込めて、髪を撫でた
「むー……」
リクが唸りながらむっくりと起き上がった。それは、私の膝の上で静かになって暫く時間をおいてからのこと。
痩せ型だけどしっかりした体躯はおもむろに立ち上がり、ふらふらと洗面台に歩いていく。
顔色、そんなに良くないけど大丈夫かな
――ガタンッ
洗面台から大きな鈍い音がした。人が倒れたような。
「リクッ!」
急いでドアを開け、広がった光景に息を飲んだ
リクが。
赤い髪の毛が伸びて全身を覆い、体がみるみる縮んでゆくのだ。手、足、顔が変形し、彼の洋服は服の意味を成さなくなる。
「リク!!」
心のどこかでまだ信じていなかったんだろう。人間が人間でなくなるという、
異常を。
どうして?なんで?
どうやってこんなことが起こるの?
どくん、どくん、上がりきった心拍、混乱状態のまま洗面所の床に座り込む。本当の本当に、私の目の前に彼という生き物が存在している。