トレードな同居人
―――…何でオッケーなんてしてしまったんだろう…。
そんな事を考えても、それこそ後の祭りだったりする。
柊谷 結菜(ヒイラギ ユナ)。
あと一ヶ月もすれば21才になる。
「お前か…眞子の友達って。」
「……なんでアンタが…眞子の彼氏なわけ?」
誕生日目前の私に降り懸かった災難は一昨日の夜中まで遡る事になる。
うっかり、そうだ…本当にうっかり親友である佐藤 眞子(サトウ マコ)に騙されるような形で成立してしまった有り得ない約束。
"同居(同棲)人トレード"
飲み会で出されたゲームみたいな話しに悪のりして了承してしまった私が悪いのか…。
付き合っている彼氏と暮らしているアパートを当たり前のように追い出されて、渡された地図にあるアパートにたどり着いた時…
私は一昨日の自分を心底呪いたくなってしまったんだ。
「入れば?」
「嫌だし!なんでアンタなんかと…っ!」
「じゃあ野宿でもしろよ。
部屋追い出されたお前が行くとこなんてねぇだろ。」
無愛想と言うか冷たいと言うか。
今日から同居する男、眞子の彼氏なんだけど…そいつは私を見ようともせずに冷たくそう言う。
「最悪…なんで透なのよー…」
「そりゃこっちのセリフだ。」
見知らぬ男じゃない。
だけど見知らぬ男でいたい。
私が今、世界一嫌いな男…山下 透(ヤマシタ トオル)。