Iの漂流戦士
【八代公園】
前に訪れた事のあるこの場所は高木功と縁がある
あの時は何も分からなかった正義だが、今は違う
二人はベンチに腰掛け、あの日と同じように座った
『僕も星野さんと話したいと思っていたんです』
先に口を開いたのは高木功
『俺に話し……?』
今まで高木功と会話をする時は決まって正義から話して来た
質問する事はあっても、質問が返って来る事はないし、いつも上手く交わされる
そんな高木功が正義と話したいと言って来た
正義にとっては予想外の展開
高木功は迷う事なく、直球で言った
『あなたは殺人鬼の事を調べてどうしたいんですか?』
メガネの奥から見える高木功の目が少し怖かった
“どうしたい”正義の答えはただ一つ
始めから、殺人鬼の存在を知ってから変わる事のない気持ち
『救いたいと思ってる』
それを聞いた高木功は…………
『……あはははははは!!!!!!』
珍しく声を出して笑った
そして一言『馬鹿げてる』と言った
正義は全く動じていない
むしろ予想範囲だった
殺人鬼の事を救いたいなんて馬鹿げてる
高木功じゃなくても、みんなが言うだろう
高木功は笑いを止め、さらに続ける
『そんな事…俺がさせませんよ』