Iの漂流戦士




【八代公園】



前に訪れた事のあるこの場所は高木功と縁がある

あの時は何も分からなかった正義だが、今は違う



二人はベンチに腰掛け、あの日と同じように座った


『僕も星野さんと話したいと思っていたんです』

先に口を開いたのは高木功


『俺に話し……?』

今まで高木功と会話をする時は決まって正義から話して来た


質問する事はあっても、質問が返って来る事はないし、いつも上手く交わされる

そんな高木功が正義と話したいと言って来た


正義にとっては予想外の展開


高木功は迷う事なく、直球で言った



『あなたは殺人鬼の事を調べてどうしたいんですか?』

メガネの奥から見える高木功の目が少し怖かった


“どうしたい”正義の答えはただ一つ

始めから、殺人鬼の存在を知ってから変わる事のない気持ち



『救いたいと思ってる』

それを聞いた高木功は…………


『……あはははははは!!!!!!』

珍しく声を出して笑った

そして一言『馬鹿げてる』と言った



正義は全く動じていない

むしろ予想範囲だった


殺人鬼の事を救いたいなんて馬鹿げてる

高木功じゃなくても、みんなが言うだろう


高木功は笑いを止め、さらに続ける


『そんな事…俺がさせませんよ』






< 163 / 526 >

この作品をシェア

pagetop