Iの漂流戦士
『一度しか言わないので良く聞いて下さい』
正義は耳を一馬に傾けた
その一語一句聞き逃さないように
『修さんは東和市岼根町、ナノハさんは富江女子校、僕は入沼中学、そこに行けば全てが分かります』
修、東和(とうわ)市
岼根町(ゆりねちょう)
ナノハ、富江(とみえ)女子校
一馬、入沼(いりぬま)中学
一馬はそれぞれの過去を、自分の口から教えてはくれなかった
それはきっと最後に、正義を試しているのかもしれない
本当に本当に
自分達を過去から救い出せるのかと
そして、殺人鬼ではない自分達に戻れるのかと
一馬はそれを言った後、スッとベンチから腰を上げた
ーーその時、いつか言った修の言葉を思い出した
当時の一馬には理解出来なかった台詞(せりふ)
一馬は正義の方を見て、修が言ったあの言葉を言った
『僕達は待っています。本物の戦士が現れるのを』
ニコリと笑った顔は幼く、これが一馬の本当の素顔
暗闇に消えてくその後ろ姿を、正義はいつまででも見つめていた