Iの漂流戦士
男はその後、ドサッと前のめりに倒れた
近くに居る少年達は遊びに夢中でそれに気付かない
『きゃ…ッ……』
女が叫ぼうとした時バッ!!と後ろから誰かに口を塞がれた
『ん……んッ…』
必死にもがくが抵抗出来ない
女は口を塞ぐ手を両手で力いっぱい握った
-------その時に気付く
これは男の手ではない
ゴツゴツとした骨はなく、サラッと柔らかい肌に細い指
女は顔を少しだけ左に向け、目線を極限まで後ろに集中させた
チラッと見えた姿は女と同じくらいの背丈に白い仮面
女の額から汗が流れる
体格も性別も勝てない相手ではない。普通ならば必死に抵抗するだろう
その人物が白い仮面さえ被っていなければ
そして女は男の腕を切り落とし、自分の口を塞いでいる犯人を知っている
“殺人鬼02”
女は今までしてきた自分の素行を思いだし、涙を流した
女には殺人鬼02に狙われる要素が山のようにあったからだ
だけど今さら懺悔(ざんげ)しても遅い
悲劇はもう始まり、終わりを告げようとしてるのだから
------ザクッー………
殺人鬼02は女の口を塞いだまま、後ろから右手を切り落とした
その勢いで仮面の右半分に血が飛び散る
ドサッと腕が地面に落ち、女はそのまま前に倒れた
地面にうつ伏せに倒れている男女の腕からは絶え間なく血が流れ続けている
それはわずか数秒の出来事だった