CAPTORS
声をかけられてうつむいたまま体を硬直させる。

見つかってしまった。

「見たことねぇ奴だな。何でここにいる」

男が近づいてくるのが足音で分かる。

希螺の頭の中は、どうしようという言葉で埋め尽くされている。

掌や背中にはじっとりと汗が浮かんでくる。

「おい、こら。人の話聞いてんのか?」

男の声にはっと我に返り、あわてて顔を上げると、目の前に男の顔があった。

「ひっ」

驚いて反射的に悲鳴を上げてしまった。

それにつられたのか、男も驚きの表情を浮かべている。

茶色に近い金色の髪に似たような瞳の色。ダークグレーのスーツを着こなしているその体は、細く見える割にはがっしりとしていそうだ。

外見的にはレイスと同じくらいの年齢くらいに見える。

「人の顔見て悲鳴上げるなんて、いい度胸してるじゃねぇか」

男がその口元に獰猛な笑みを浮かべ、希螺の頭を鷲掴みにする。

力はさほど入ってはいなかったが、その笑顔と声の迫力で、希螺は再度小さく悲鳴をあげた。
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