CAPTORS
やっぱり仕事を抜けてきていたんじゃないか、と一人憮然とした表情で口をとがらせる希螺。

すぐ側では春日がしょうがないと言わんばかりに深く息を吐いた。

「キラ、もう退出の手続きは終わっているのか?」

「……え?一応終わってるけど?」

一瞬言葉に詰まって応えた希螺に春日はそうかと頷き、ついてこいという言葉を残して部屋を出ていってしまった。

「待ってくれよ!春日」

一人で残されるなどとんでもない。
自分はこの部屋しか知らない。春日を見失ってしまうと、元の場所にも戻れない自信だけが明確にうきでてくる。

あわてて部屋を飛び出すと、春日は律儀に廊下で待ってくれていた。

「あ~焦った。先に行かれちまったかと思った」

「……お前が呼び止めただろ?」

安心するように肩を落とした希螺の目の前に位置する場所にいた春日が、不思議そうに首を傾げる。

「いや、そうなんだけどさ……先に行かれても、オレこの建物初めてだから、全くわかんねぇから……」


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