オバケの駐在所
だが私は彼のピッチングに
惚れ惚れとしていたのだ。

……ほら、
また外さない。

「でも、あの人すごいね。

さっきから見てるけど
小さな円の中に
全部ボールを当ててる。」

グラウンドの端にある
バックネットの壁には
自分で書いたのだろうが
バレーボールほどの
お粗末な丸。
全ての投球が
その中に吸いこまれる。
……しかも変化球も
織り交ぜてだ。

「……目がいいんだね。

あいつの事は小さい時から
知ってるけど
本当野球バカでさ。
ピッチングに関しては
天才的だよ。

だけど……。」

彼は遠くで
大きく弧を描いた
スローカーブを
またもや見事に
円に入れてみせた。

「……あいつは
あんなもんじゃない。」

拳に力を入れて
微かに震えているようにも
見える彼女は
急に教室の窓を開けて
思いきり息を吸う。

「バーカヤローー!!」

……げっ!
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