オバケの駐在所
どこからともなく
聞こえてくる
赤ん坊の鳴き声。

この深い森の中で?

どうせ狐か狸か、
もしくは異界へと誘う
死霊の罠かもしれんな。

だがその足先は
自然とそちらの方向に
歩きだしていた。
興味本位と
言えるかもしれない。

どうせここら一帯には
なかったのだ。
探すついでに
騙されてやるのもいいな。

だが草木をかき分け行くと
聞こえてくるのは
どうも本当に
人間の子の鳴き声のようで、
多少だが警戒しつつ
闇の中を進み出す。

木々の隙間から注ぐ
わずかな月明かりを頼りに
森の中を模索していった。

冬場の枯れ木なら
空が覗けて
もう少し前が
見えたかもしれないが
今は葉に覆われている。
わしも夜目が利くほうだが
これだけ暗いと
見つけるのは
困難かもしれない。

そう思ってた折、
目の前の木を
避けてみると
声の主は意外に
簡単に見つかった。
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