オバケの駐在所
一筋の月の光が
スポットライトのように
その子を照らして
大きな口を開けながら
めいいっぱい鳴いている。

偶然にしては運がいい。
しかし本当に
人の子だったか……。

まだ生まれて間も
ないのだろうか、
シワのような横にのびた
目をしていて
涙をたくさん出しながら
顔を赤く腫らしている。

放っとこうかとも思ったが
わしのちっぽけすぎる
良心がやんわりと
反応していた。

まぁ正確に言えば
その逆なのかもしれないが。

「親に捨てられたか?
なんでこんな所にいる?」

その子はわしの言葉に
一切反応せず
ただただ泣くばかり。

「……こんな所に
捨てていきやがって。
見るからにまだ
自立もできてねぇ
じゃねーか。」

赤ん坊の体を
包んである白い布から
乳臭さが
プンプン漂ってきて
ついよだれを
垂らしてしまう。
赤子の肝と言えば
妖怪にとって
昔も今も変わらない
ごちそうだ。
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